焼成カルシウムとは?

焼成カルシウムは、比較的多量にカルシウムを含有する物質を原料として高温で焼いたものであり、原料のカルシウム含有物には、うにの殻、ホタテ貝などの貝 殻、鶏卵の殻、牛などの動物の骨および魚の骨、造礁サンゴの死骸、乳清(酸カゼインホエイ)が使われている。主成分は、うに殻、貝殻、卵殻および造礁サン ゴを原料にしたものは「酸化カルシウム(生石灰)」であり、焼成(焼き方)が不十分な場合には、炭酸カルシウムが残っていることがある。また、骨及び乳清 を原料としたものは「リン酸カルシウム」である。純度的には、類似の化学的に合成したものに近い場合もあるが、一般的には、いろいろな不純物が含まれてい る。これらのカルシウム剤は、カルシウム強化の目的で、強化剤として使用されることがあり、また、食品添加物としての用法ではなく、いわゆる健康食品とし て錠剤の形で市販されていることもある。貝殻と卵殻を原料にする焼成カルシウムは、水に溶けて強いアルカリ性を示すため、中華めん風のめん類に、「かんす い」と同じ目的で使用されることもある。
特筆すべき性質として水に溶かすと抗菌作用を発揮する。

色々な素材の焼成カルシウムが有るけど・・どれがよいのか?
飛び抜けた抗菌・殺菌効果を示すのはホッキ貝を焼成した「サーフクラムカルシウム」
O−157の試験では牡蠣「オイスターカルシウム」の200倍の殺菌効果!
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研究

日本食品化学学会 (平成11年6月4日)
焼成ホッキ貝 (サーフクラムカルシウム) の抗菌性と環境ホルモン等の除去効果

新潟薬科大学助教授 及川 紀久雄 先生

1.概要

ホッキ貝を焼成した粉未に、O-157を含む大腸菌、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌に対し、従来より知られている牡蠣殻焼成カルシウムより20倍もの高い抗菌 性がある事を明らかにしたとともに、環境ホルモンであるフタル酸エステル類の野菜類からの除去効果も優れている事も判明した。
ホッキ貝(surf clam)はじめ牡蠣、ホタテ貝、ハマグリ等の殻を焼成したものを「焼成カルシウム」と呼び食品衛生法では既存添加物として食品への焼成カルシウムに抗菌性があることが報告され、その面での応用・活用が検討されている。

本研究においては、まず、牡蠣、ホタテ、サザエ、ハマグリ、巻き貝の各貝を焼成し、一般細菌と大腸菌を用いて抗菌性の効果の比較を行ったところホッキ貝の 殻の焼成粉末に最も高い抗菌性が確認された。従ってすでに抗菌性が知られている焼成牡蠣殻(以後オイスターカルシウムと呼ぶ)と焼成ホッキ貝(以後サーフ クラムカルシウムと呼ぶ)の抗菌性比較を行った所、明らかにサーフクラムカルシウムの方が病原性大腸菌O-157、緑膿菌、黄色ブドウ球菌のいずれの菌に 対しても殺菌効果が優れていること、さらに殺菌の作用について解明を行い、また効果の違いについても科学的に明らかにした。

次いでサーフクラムカルシウムの野菜・果物や調理用具の殺菌消毒と同時に農薬や環境ホルモンの除去効果についても検討を行なった。その結果、チンゲン菜に 農薬サブロール乳剤(トリホリン)を添加したものについて水だけの洗浄と比較したところ、水だけでは15%、サーフクラムカルシウム0.1%水溶液を洗浄 液としたものは、41%の除去率であった。また、環壊ホルモンとして取り上げられているフタル酸エステル類に対しての除去率は100%の効果が見られた。
この様にサーフクラムカルシウムは殺菌効果だけでなく、野菜類の有害物質の除去効果の点でも優れていることが分かった。

次亜塩素酸ナトリウム、サラシ粉は食品添加物・殺菌剤として日常的に用いられているが、使用時刺激性ガスの発生やトリハロメタン等多くの有害な有機塩素化 合物の生成など問題点が多い。サーフクラムカルシウムはそれに代わる安全な野菜や果物の除菌リンス剤として極めて有効である。さらに環境ホルモンや農薬な どの除去も同時にできる点でも実用性の高いものといえる。
さらに、現在、サーフクラムカルシウムの抗菌剤としてのサルモネラ菌、腸炎ビプリオ、カンジタ菌、レジオネラ菌など広い抗菌スペクトルについて検討を行っていると共にダイオキシン等の除去効果についても継続実験中である。

2.サーフクラムカルシウムとオイスターカルシウムの抗菌効果

本研究においては先ず牡蠣、ホッキ貝、ホタテ貝、サザエ、蛤、巻貝の粉末と焼成粉末について、河川水中の一般細菌・大腸菌郡数の減菌性の比較検討をした。 その結果が表-1に示されているが、ホッキ焼成粉末が最も減菌効果が高いことが分かる。また、焼成しない各貝の粉末はいずれも全く減菌効果がなく、焼成 (500℃〜900℃・後期不活性ガス処理)することにより殺菌効果が出ることが分かった。また、各貝の主成分はケイ光X線分析で90%以上がカルシウム で、またその結晶構造はX線解析によりCaCO3であることが、さらに焼成することによりCaCOの形になることが解った。

本研究においてはサーフクラムカルシウムとオイスターカルシウムの殺菌性について大腸菌、病原性大腸菌O-157、緑膿菌、黄色ブドウ球菌を用いてさらに 詳細に検討した。抗菌性試験方法は表-2に示した。大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌についての試験結果を発育菌数(個/ml)で表したのが表-3である。 オイスターカルシウムは大腸菌では1時間経過では1%レベル、24時間経過では0.5%が効果の最少濃度レベルと見られる。また緑膿菌、黄色ブドウ球菌で は1%でも十分な殺菌効果が見られない。

それに対してサーフクラムカルシウムは大腸菌に対して、0.05%レベルでも十分な菌発育抑制効果が見られ、また緑膿菌、黄色ブドウ球菌に対しても相当の 抑制効果が見られた。さらにサーフクラムカルシウムについて、資料濃度を0.025%、0.005%に調整し、追加試験を行った。その結果、大腸菌、緑膿 菌については0.025%の濃度レベルでの発育抑制効果が確認された。

【病原性大腸菌O-157に対する抗菌試験】

表-4に示される大腸菌O-157の抗菌試験方法によってサーフクラムカルシウムとオイスターカルシウムの抗菌性試験を行なった。その結果を表-5に示し たが、サーフクラムカルシウムの場合0.05%濃度レベルでDK02株、DK03株に対し抗菌効果が見られ、24時間後では0.025%でも効果が見られ た。それに対し、オイスターカルシウムの場合0.5%で1時間後では効果が見られず、24時間後でその効果が見られた。しかし、24時間後の場合0.1% では全く効果が見られない。従ってサーフクラムカルシウムはオイスターカルシウムの約20倍も抗菌効果が高いことが伺える。

3.抗菌作用のメカニズム

1) サーフクラムカルシウム及びオイスターカルシウムの成分組成とpH、蛍光X線分析による成分分析では次のようになる。

2) pHと殺菌効果

pHと殺菌効果の関係を見るためサーフクラムカルシウムの0.5%溶液についてpHを7〜12.4に調節し、病原性大腸菌O-157(DK02)を、106個 / mlになるよう添加し20時間後の生存菌数を濃度段階別に見たのが、表-6である。
その結果pH11でやや抗菌効果が見られたもののpH11以下ではほとんど殺菌効果がないことがわかる。

試料 サーフクラムカルシウム
試験菌株 病原性大腸菌O-157(DK02)
使用培地 DDチェッカー 一般細菌用、血液寒天平板
培地条件 37℃ 18時間
試験方法 @ 試料の0.5%を2,800rpm 30分間遠心し、その上清を採取する。
A 上記上清に塩酸を加えてpHを段階的に下げる。
B 各pH調整資料液10mlにO-157を106個となるように添加する。
C 20時間後存在菌数を測定する。

4.殺菌効果作用

これまでの検討の結果、サーフクラムカルシウムの殺菌効果作用は強いアルカリ性にあることが明らかとなった。効果は主として〔OH〕が細胞壁を通過し、加 水分解することにより発現するものと考えられる。また本検討により病原性大腸菌O-157はpH12以上で明らかな殺菌効果が見られた。一般にグラム陰性 菌やウイルスはアルカリに弱いとされていることからこの点での検討を行う。

5.環境ホルモン、農薬除去効果

プラスチック類の可塑剤として用いられ、広く環境からの検出頻度が高く環境ホルモンの疑いがあるフタル酸エステル類を選び、エチル、イソプロピル、ペンチ ル、ヘキシル、ヘプチルについて10μg/Lの濃度の標準液を添加したサラダ菜について除去効果を見たところ、サーフクラムカルシウムの0.1%で完全に フタル酸エステル類は除去されていた。それに対し、対象の水は除去率40〜50%と悪い。

農薬についてはチンゲン菜に予めサプロール乳剤(成分トリホリン)1,000倍液を散布したものについて、サーフクラムカルシウムの除去効果を見た。その結果サーフクラムカルシウム0.1%水溶を洗浄液としたものは41%の除去率で、対象の水だけのものは15%であった。

  サーフクラムカルシウム オイスターカルシウム
Ca 98.90wt% 97.50wt%
Na 0.41 0.85
Sr 0.40 0.27
Sr 0.17 0.32
Cl 0.05 0.34
Si 0.05 0.27
K 0.02 0.04
Fe   0.14
Al   0.05
P   0.06

共にカルシウムが大部分であるが、サーフクラムカルシウムのカルシウム含量はほぼ99wt%で、オイスターカルシウムは97.5wt%とやや少い。
次にX線解析分析による結晶構造を見ると、未焼成の貝はいずれも主成分はCaCO3(Calcite)で、燃成することにより、それらCaO(Lime)に変化している。
オイスターカルシウムにおいてはCaCO3も見られる。

CaOは水と次のように発熱反応を起こしてCa(OH)2を生ずる。
CaO+H2O=Ca(OH)2+15.2kcal
この現象を一般に消化と呼ばれる。水溶液は生じた水酸化カルシウムの加水分解の結果、強いアルカリ性を示す。従ってサーフクラムカルシウムとオイスターカ ルシウムについて抗菌性試験時の濃度溶液を調整しpHとORPを測定した。また併せて参考として水酸化ナトリウム(NaOH)についても測定したところ表 -7に示すような結果を得た。
サーフクラムカルシウムは0.025%の水溶液でpHは12.02を示しているが、オイスターカルシウムの場合pHは10.42とアルカリ性が弱く、1.0%の濃度の溶液でもpHは11.82とサーフクラムカルシウムより低い。

オイスターカルシウムは蛍光X線分析でも見られたようにサーフクラムカルシウムよりカルシウム含量が少いこと、またX線回析分折によりCaCO3が見られたことから、加水分解によるOH-生成量が少く、pHが低くなっていると考えられる。
(表-7参照)またカルシウムイオン量をサーフクラムカルシウム及びオイスターカルシウム各々の0.025%から0.5%に調整し、イオンクロマトグラフ 法でCaイオン量を測定したところ、サーフクラムカルシウムは高いCa濃度で溶解していることが分かった。すなわちオイスターカルシウムは水溶液中にOH 量が少いことが推察される。

6.実試料除菌効果試験

サーフクラムカルシウムの実試料での除菌効果を見るため、食品の殺菌消毒剤として日常的に用いられている次亜塩素酸Naとの効果比較を行なった。試料とし てスーパー、デパート等の食品売り場で見られるカット野菜の代表、レタスを選んだ。一般細菌への除菌効果はSA培地を、また病原性大腸菌O-157等大腸 菌群を見るためにDA培地での細菌培養試験を行なった。その結果一般細菌に対して100ppmのサーフクラムカルシウム溶液は、開始時で未処理カットレタ スの生菌数(6.6×105/g)に対し、一桁低い菌数である。4時間後、7時間後、24時間後でもその桁の差は変らない。また 90ppmの次亜塩素酸Naの場合も前者とほぼ同様の傾向である。このことによりサーフクラムカルシウム溶液は次亜塩素酸Naと同等の除菌効果作用を有す ると考えることができる。

病原性大腸菌O-157はじめ大腸菌群では開始時初期は次亜塩素酸Na溶液が6.4×102/g、これに対サーフクラムカルシウム溶液は2.1×103と除菌効果は一桁低いが、逆に時間の経過と共に前者より高い持続性除菌効果が見られる。これらの結果からサーフクラムカルシウムは次亜塩素酸Naを上回る除菌効果を有すると考えられる。

表−1 各貝殻の未焼成、焼成粉末の一般細菌、大腸菌の滅菌効果比較
試料液(検体)
(検体0.1%W/v 含河川水10分後採取)
一般細菌数 / ml(標準寒天培地法) 大腸菌数 / ml(デソキシコール酸培地法)
焼成 サーフクラムカルシウム 6 0
未焼成 サーフクラムカルシウム 3,900 55
焼成 オイスターカルシウム 620 0
未焼成 オイスターカルシウム 3,700 62
焼成 ハマグリ 630 0
未焼成 ハマグリ 3,700 48
焼成 ホタテ 720 0
未焼成 ホタテ 4,100 62
焼成 サザエ 720 0
未焼成 サザエ 3,700 54
焼成 巻貝 650 0
未焼成 巻貝 3,600 47
対象液(河川水) 3,100 56

表―2 大腸菌、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌性試験方法
試験菌株 大腸菌 (Escherichia coli ATCC 8739)
緑膿菌 (Pseudomonas aerugiosa ATCC 9027)
黄色ブドウ球菌 (Staphy lococcus sureus ATCC 6538)
使用培地 DDチェッカー 一般細菌用、血液寒天培地
培地条件 37℃ 18時間
試験方法 @ 各試料を適当な濃度となるよう蒸留水で溶解する。
A 各濃度溶液に各試験菌を105個 / ml程度になるように添加。
B 菌添加後よく撹拌し室温に静置し各時間後にサンプリングを行い生存菌数を測定する。

表―3 大腸菌、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌性試験結果
(表中の数値は発育菌数個/mlを表す)
試料 濃度 大腸菌 黄色ブドウ球菌 緑膿菌
1時間後 24時間後 1時間後 24時間後 1時間後 24時間後
オイスターCa 1% < 20 < 20 40 2 < 20 2
0.5% 6.4×105 < 20        
0.1% 2.5×105 2.0×102 4.0×105 5.2×105 2.2×102 < 1
0.05% 2.5×105 1.2×105        
サーフクラムCa 1% < 20 < 20 < 2 < 2 < 2 < 2
0.5% < 20 < 20        
0.1% < 20 < 20 2.0×102 60 < 2 < 2
0.05% < 20 < 20        
0.025% 4 < 2     20 < 2
0.005% 1.6×105 4.0×105     2.4×104 2.0×102

表―4 病原性大腸菌O-157の抗菌試験方法
1) 試料 オイスターカルシウム、サーフクラムカルシウム
2) 試験菌株 病原性大腸菌O-157(DK02、DK03)
3) 使用培地 DDチェッカー 一般細菌用、血液寒天平板
4) 試験方法 @ 各試料を適当な濃度になるよう蒸留水で溶解する。
A 各濃度溶液に各試験菌を105〜6個 / ml程度になるように添加する。
B 菌添加後良く撹拌し室温に静置し各時間後にサンプリングを行い生存菌数を測定する。

表-5 病原性大腸菌O-157の抗菌効果
試料 濃度(%) 1時間後 24時間後
DK02 DK03 DK02 DK03
オイスターCa 0.5 50 3 < 2.5 < 2.5
0.1 多く計測不能 多く計測不能 5.0×102 2.5×102
サーフクラムCa 0.05 < 2.5 < 2.5 < 2.5 < 2.5
0.025 2.0×102 2.0×102 < 2.5 < 2.5
※ < 2.5は実質的にゼロ

表-6 pHと殺菌効果
pH 生存菌数
未調整 12.4 0
11.0 42
10.0 8.4×105
9.0 2.0×106
8.0 4.0×106
7.0 4.0×106
蒸留水 5.7 4.0×106

表-7 サーフクラフトカルシウム、オイスターカルシウム及びNaOH溶液のpH、ORP測定値
1999 / 3 / 20測定  測定時水温18℃
  サーフクラムCa オイスターCa NaOH
pH ORP(mV) pH ORP(mV) PH ORP(mV)
0.025% 12.2 55 10.42 145 12.06 88
0.05% 12.29 40 10.89 120 12.30 70
0.1% 12.69 30 11.31 78 12.58 40
0.5% 12.75 22 11.55 51 13.07 18
1.0% 12.85 15 11.82 20 13.26 5

表-8 試験液に浸漬したカットレタスの生存菌数測定結果
測定培地 試験液 生存菌数 / g
開始時 4時間後 7時間後 24時間後
SA培地
(一般細菌)
未処理
(カットレタス生存菌数)
6.6×105 3.9×105 7.3×105 7.4×104
0.1%
サーフクラムカルシウム溶液
2.7×104 1.2×105 2.2×104 3.5×103
90ppm
次亜鉛素酸ナトリウム
1.8×104 1.5×105 5.5×104 3.6×104
対象
(水道水)
1.5×105 8.5×106 2.7×105 5.8×105
DA培地
(大腸菌群)
未処理
(カットレタス生存菌数)
1.9×105 9.9×105 6.2×105 1.4×105
0.1%
サーフクラムカルシウム溶液
2.1×103 8.7×103 1.4×104 3.5×104
90ppm
次亜鉛素酸ナトリウム
6.4×102 1.1×105 4.1×104 1.6×105
対象
(水道水)
1.2×105 2.2×105 1.9×105 9.8×105
※SA培地 標準寒天培地(一般細菌用)
※DA培地 デオキシコーレイト寒天培地(大腸菌用)